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シャーロック・ホームズの鉄道学 [ ┗研究書・パスティーシュ]

英国は鉄道発祥の地で、ホームズが活躍した19世紀後半に絶頂期を迎えたことから、ホームズ物語でも鉄道を使うシーンが頻繁に登場します。

 例えばSydney Pagetが描いた挿絵で、私も大好きなこんなイラストがあります。

これは「白銀号事件」で、ホームズとワトソンが一等者の客室で事件について話しているシーンです。ホームズのイメージであるディアストーカー(帽子)とインバネスコートが広まったのは、本文の描写ではなくこの絵からだったそうです。

他にも依頼人がホームズの助けを借りに鉄道で駆けつけてくることも多く描かれていますし、中には鉄道を利用した犯罪もありました。

 

ロンドンに住んでいると地下鉄(チューブ)はよく利用するのですが、鉄道についてはそれほど利用する機会がありません。ホームズ作品をより良く理解するためには鉄道の知識は欠かせないと思っていて、英国の鉄道に関する本が読みたいと思っていた時に見つけたのがこの本でした。

シャーロック・ホームズの鉄道学 マイロネBOOKS

シャーロック・ホームズの鉄道学 マイロネBOOKS

  • 作者: 松下 了平
  • 出版社/メーカー: JTB
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 単行本

まさに今の私のニーズに合致する本でした。

内容は、英国鉄道の成り立ちから始まり、ホームズ作品の中で鉄道が重要な役割を果たした4つの事件をとりあげ、さらにホームズが解決した事件と類似する後世の推理小説やホームズ後の英国の探偵もので鉄道に関係する事件を紹介し、最後はヨーロッパの鉄道が登場する「最後の事件」に触れて終わります。

ホームズにも英国の鉄道にも興味がない人にとっては読み進めるのが難しいかもしれませんが、ホームズ作品を読み終えて、さらに当時の英国について知りたいと思い始めた人にとっては格好の本だと思います。

正典(ホームズ60作品をこう呼んでいます)に登場する鉄道に関する記載を、当時の路線、時刻表と照合して矛盾がないか、あったらどう説明すればよいかというアプローチが多く取られています。いくつかの説明については、鉄道学的には無理がないのかもしれないけどちょっと飛躍させすぎというものもあって、ワトソン博士が書いた記載は基本的に正しいと考えたい私としては、ちょっと受け入れがたいものもあります。

例えば、「まだらの紐」で、依頼人が早朝の便で来たことをホームズが推理で当てるというシーンがあります。しかし、当時の時刻表によれば、依頼人の最寄り駅からこの時間帯にロンドンに到着できる便はないということから、実は依頼人が嘘をついていて、事件の構図もホームズが解決したとおりではなく実は依頼人が仕組んだものだったのではと推測したりしています。鉄道についての矛盾は解消されるのですが、実はホームズが探し当てた犯人が真犯人ではないということになってしまうというのは私の好みではないようです。アプローチとしてはありだと思いますし、考え方として面白いとは思いますので、純粋に個人の好みによるものですが。

英国鉄道についての知識は十分得ることができましたし、全般的には非常に良い本と出会えたと満足しています。今度は、もう少し英国鉄道そのものについて書かれた本も読んでみたくなりました。


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