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「ホームズゆかりの地」案内:Shadwell [ ┣「ゆかりの地」案内]

Shadwell Underground Station P37

ShadwellはLimehouseの次の駅になりますが、ここでDLRとチューブが接続しています。

Limehouseと同様、ロンドンの郊外の中所得層の街といった印象でした。

1.Christian (Church) Street, E1

「六つのナポレオン」
FSLの記載:
Called Church Street in The Six Napoleons, this street, in Stepney, is where the firm of Gelder and Co. was located. They were a well-known house in the trade, and made the busts of Napoleon. Holmes knew that Beppo was the common factor.

延原訳登場シーン:「胸像をどこから仕入れたかとおっしゃるんで? そんなこと調べてみたって、なんの足しにもなりやしませんよ。え? ほんとにお知りになりたい? あれはステプニ区のチャーチ街のゲルダ商会から仕入れた品ですがね。ゲルダ商会といえばその方じゃ名がとおっていますよ。もう二十年もやっています。

(中略)じゃワトスン君、こんどはステプニ区にこの胸像の製造元ゲルダ商会を訪ねることにしよう。ゲルダ商会でなにか有力な発見をしえなかったら、それこそ不思議だと思うよ。かならずなにかある」
流行のロンドン、ホテルのロンドン、劇場のロンドン、文学のロンドン、商業のロンドン、そして最後に海運のロンドンと、私たちはたてつづけにいろんな街をすぎて、ついにヨーロッパ中の食いつめものどもの集っている、悪臭鼻をつくむさ苦しい棟割長屋のたてこんだステプニ区へときた。
 求める工場は、かつては市内に店舗をもつ立派な実業家たちの住居のならんでいた、この区の目抜の大通りにあった。屋外のかなりひろい空地では、記念碑の石工がいっぱいに行なわれており、なかへはいってみると、大きな工場で五十人あまりの工員が彫刻したり型をとったりして働いていた。

 

こちらが作品中ではChurch Streetと呼ばれていたChristian Streetです。

まだ工場があるような所かと思いましたが、すでに住宅街となっているようで、大きめな団地が隣接しています。昼間でもあまり人通りのない道でした。落書きなどがあるところを見ると、ヴィクトリア時代から変わらず、いまもあまり柄の良い土地ではなさそうです。
ただ、この通りは目抜きの大通りという訳ではないので、正典とは若干矛盾するようです。この写真を撮った背後に大きな通りがあったので、角地に工場があったのかもしれません。

FSLでは触れられていませんが、「ボール箱」で犯人のジム・ブラウナーが取り調べを受けたのがシャドウェル署でした。

「ボール箱」
延原訳登場シーン:
「それにしてもジム・ブラウナーはどんなことをいっているのかな? これはシャドウェル署のモンゴメリイ警部にたいしての供述書だが、言葉通りになっているから都合がいい」

ところで、「ボール箱」を改めて読み直して、ホームズの兄弟構成に関する興味深い記述を発見しました。序盤で、ホームズがワトソンの考えていることを当てるという有名な場面があるのですが(古い版では「ボール箱」が単行本に入らずこの部分のみ「入院患者」に写されていたそうです。)、この直前の場面でワトソンがこんなことを言っています。

『彼の才能は多方面だけれど、自然鑑賞の能力だけは、少しも見あたらないのである。彼の唯一の気分転換といったら、ロンドンの悪人どもから、思いを田舎にいる兄のもとにはせるときくらいのものだ。』

ホームズの兄弟と言えば、マイクロフトが有名、というか唯一登場するホームズの肉親な訳ですが、この「ボール箱」事件の起こったとされる1889年は、マイクロフトが登場する「ギリシア語通訳」事件の起こった翌年、「ブルースパーティントン設計書」の起こった4年前のこと(いずれもベアリング・グールドによる)ですので、マイクロフトが田舎に引退していたと言うことはあり得ないと言って良いと思います。つまり、ホームズにはもう一人の兄がいたということがこの一文から言えるのではないでしょうか。
以前にも紹介したベアリング・グールドによるホームズの伝記、「シャーロック・ホームズ ガス灯に浮かぶその生涯」 では、ホームズとマイクロフトの上にもう一人の兄がいて、彼が親の農園を引き継いだことになっていますが、その根拠がここにあったのだと納得した次第です。

原書では、「田舎にいる兄」は、「his brother of the country」となっていました。inではなく、ofを使っているというところが若干引っかかるところで、他の翻訳ではどう訳されているのか気になるところです。「ロンドンの悪人」が、「evil-doer of the town」となっていますので、対比としての「田舎の兄」なのですが、であれば意味的には変わらないような気もします。Klinger版ではここに注釈はついていませんでした。もうすぐベアリング・グールド版のホームズ全集も届く予定ですので、届き次第確認してみようと思います。

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  これまで紹介してきた「ホームズゆかりの地」については、ホームページ「The World of Holmes」(管理人:みっちょんさん)の、「地下鉄駅を中心にしたホームズゆかりの地案内」のコンテンツで、リストにしてくださっています。みっちょんさんありがとうございます。 


現地探訪はこちらの本を基に行っています。(本文ではFSLと略しています。)

Finding Sherlock's London: Travel Guide to over 200 Sites in London

Finding Sherlock's London: Travel Guide to over 200 Sites in London

  • 作者: Thomas Bruce Wheeler
  • 出版社/メーカー: Iuniverse Inc
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: ペーパーバック
 
延原謙氏の訳はこちらからの引用です。

新潮文庫 シャーロック・ホームズ全集

新潮文庫 シャーロック・ホームズ全集

  • 出版社/メーカー: インターチャネル・ホロン
  • 発売日: 1998/02/06
  • メディア: ソフトウェア

 

 

その他に参考にしている本はこちら。

Sherlock Holmes in London: A Photographic Record of Conan Doyle's Stories

Sherlock Holmes in London: A Photographic Record of Conan Doyle's Stories

  • 作者: Charles Viney
  • 出版社/メーカー: Smithmark Pub
  • 発売日: 1995/09
  • メディア: ハードカバー

この本は日本語訳も出ているそうです。

 

シャーロック・ホームズの見たロンドン―写真に記録された名探偵の世界

シャーロック・ホームズの見たロンドン―写真に記録された名探偵の世界

  • 作者: チャールズ ヴァイニー
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1997/03
  • メディア: 文庫

原典にあたるときはこちらの新注釈付ホームズ全集を使っています。注釈があるので場所の特定に困ったときなど助かっています。

The New Annotated Sherlock Holmes 150th Anniversary: The Short Stories

The New Annotated Sherlock Holmes 150th Anniversary: The Short Stories

  • 作者: Arthur Conan, Sir Doyle, Leslie S. Klinger
  • 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
  • 発売日: 2004/11/08
  • メディア: ハードカバー

New Annotated Sherlock Holmes: The Novels: A Study In Scarlet / The Sign Of Four / The Hound Of The Baskervilles / The Valley Of Fear

New Annotated Sherlock Holmes: The Novels: A Study In Scarlet / The Sign Of Four / The Hound Of The Baskervilles / The Valley Of Fear

  • 作者: Arthur Conan, Sir Doyle
  • 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
  • 発売日: 2005/10/25
  • メディア: ハードカバー

 


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コメント 4

降龍十八章

もう一人の兄とはおもしろしですね。
his brother of the country を現地の人はどんな意味に解釈するのか知りたいですね。ほかの訳もありえるのでしょうか?
of の解釈がむずかしいですが、基本的には~の一部という意味だと表いるのですが・・・
さて、日本では今、NHKのBSでマスターキートンをやっています。ヤワラと違って読みずらかったため、読んでいなかったのですが、アニメでやってくれたのでようやく話が分かりました。アメリカではなくイギリスが舞台だったんですね。
by 降龍十八章 (2007-07-10 22:36) 

Tomo

降龍さん、こんにちは。

Brother of the countryは肉親の兄弟のことだとは思うのですが、同胞みたいな意味もあるのかななどと思ったり。悪人との対比だったので。でも兄弟、しかも田舎に残ったと言うことは長男ということではないかと思っています。

マスターキートンは名作です。アニメも原作に忠実なので非常に好感が持てます。(原作をぶちこわしにするアニメもありますからね。)マンガの単行本が絶版状態で手に入りずらいのが残念です。
by Tomo (2007-07-11 09:42) 

降龍十八章

なるほど、故郷の兄弟というところでしょうか?でもホームズの故郷ってどこでしたっけ?さすがにスコットランドやウェールズではないんでしょうね。

マスターキートンはYAWARAの耕作のイメージが強すぎて、なかなか入っていけなかったんですよね。もっとも、その前はHAPPYとかいうテニス漫画がさきだったでしょうか?これはYAWARAの二番煎じで、あまりヒットしなかったような印象があります。
by 降龍十八章 (2007-07-12 22:23) 

Tomo

教えていただいたことなのですが、他の訳では、hisはホームズではなく、悪人のこととして訳されているようです。原文をみてもその方が意味が通るようです。ここでは都会の悪者から田舎の(悪者の)兄弟にいきつくということのようです。ちなみに、ホームズの故郷はどこにも言及されていないのですが、彼の言葉の端々から推理するとサセックスだと言われています。隠居したのもサセックスでした。

浦沢作品については、私はスピリッツがあまり好きでなかったため柔からではなく、パイナップルアーミーから入りました。(こちらも傑作です。)ここからキートン、Monsterと続いたのですが、Monsterは途中で読んでないところがありますので、前の二つよりは好きではなかったようです。
by Tomo (2007-07-13 00:34) 

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