「ホームズゆかりの地」案内:St. John's Wood [ ┣「ゆかりの地」案内]
St. John's Wood Underground Station P27-28
今回はホームズが唯一認めた女性、アイリーン・アドラー(こちらの人は敬意を表してイレーネと大陸風に発音すると聞いたことがあります)が住んでいた邸宅を訪ねて、ジュビリーラインのSt. John's Woodへ行ってきました。リージェントパークにほど近い閑静な高級住宅街でした。
1.St. John's Wood, NW8
「ボヘミアの醜聞」
FSLの記載:In A Scandal in Bohemia, Irene Adler llived in Birony Lodge, St. John's Wood. Holmes devised a scheme to find out where she hid the picture of her and the King of Bohemia.
延原訳登場シーン:「金貨で三百ポンド、紙幣で七百ポンドある」
ホームズは手帳の端にうけとりを走りがきして、それを王に渡した。
「婦人の住所はおわかりでございますか?」
「セント・ジョーンズウッド区サーペンタイン広小路のブライオニー荘だ」
ホームズはその住所をも書きとめた。
作品の中では、サーペンタイン通りとなっていますが、St. John's Wood周辺に同名の通りはありません。従って、場所の特定は難しいのですが、さすがは”The Woman”の家だけあって、多数のシャーロッキアン達が、アイリーンの家がどこにあったかなんとか特定しようとしてがんばったようです。
今回は2カ所の候補地を紹介します。
まず1カ所目は「Sherlock's London Today」で展開される説に従って、候補地に行ってみましょう。
「Sherlock's London Today」は、町歩き形式のホームズゆかりの地案内本ですが、正典の記述だけではなく、各種シャーロッキアンの研究成果も含めてゆかりの地を特定しています。(残念なのは、出典が明らかになっていないので根拠などをたどることができたことでしょうか。)こちらによれば、サーペンタイン通りの描写を多く満たしているのがCharlbert Streetという通りだそうです。
こちらが通りの様子。
そして、この通りにある家のいくつかがBriony Lodgeの要素を満たしていて、候補を見つけるのは難しいとしながらも、Mackennal Streetとの交差点にある家が有力な候補としてあげています。
この通りをさらに南下すると、リージェントパークに行くことができます。彼女が毎日通って公園に行っていたのはこの通りだったとのこと。
もう一つの候補地は、David Hammer著「For The Sake of The Game」に記されているElm Tree Roadです。この本は、著者のHammerが、実際に現地を訪問してゆかりの地を検証した本で、いくつかの重要な場所に絞って検証しています。
彼がElm Tree Roadを候補としてあげた理由はいくつかありますが、一つは大きく曲がっている通りであることだそうです。
延原訳登場シーン:このとき、大通りのカーヴをまわったので、馬車の側灯が見えてきた。やがてブライオニー荘の玄関によせられたのは、当世風の小さい四輪馬車だった。
ここを訪れた彼が、いくつかの特徴から候補としてあげたのが、33番地の家でした。
こちらは裏側になります。
家そのものについてはこんな描写がされています。
延原訳登場シーン:「で、アイリーンのブライオニー荘というのはすぐわかったが、小ぢんまりした二階だての別荘風の家でね、裏には庭があるけれど、表は往来からすぐだった。入口にはチャブ錠がかけてある。はいってすぐ右がわが飾りつけの立派な大きい居間で、床まで届きそうな大きい窓があるが、これは子供にもあけられる例のイギリス風の愚にもつかぬ戸締りがしてあるだけだ。裏手はこれといって変ったところもない。ただ馬車小屋の屋根から手の届くところに、二階の廊下の窓が一つあった。そのほか家のまわりを歩いて、あらゆる見地から注意ぶかく検めてみたが、これといって注目すべきところはない。」
また次のような記述も参考になると思われます。
延原訳登場シーン:わめき騒ぐ群衆のあいだをぬけて、私はそっと街角までたちのいた。そして十分間ののち、ホームズが来て私の腕に手を通すのにあい、いっしょに騒ぎの現場から立ちさったのだった。
彼は無言のまま、数分間は走るように速く歩いたが、エッジウェア街のほうに出るそのへんの人通りまばらな横丁へ入ると、やっと歩調をゆるめていった。
エッジウェア街までは10分と数分といったところでしょうか。
永遠の謎かとは思いますが、ほかの場所特定の探索よりもシャーロッキアン達の気合いが入ってるのは、やはり対象がアイリーン・アドラーだからだと妙に納得です。
これまで紹介してきた「ホームズゆかりの地」については、ホームページ「The World of Holmes」(管理人:みっちょんさん)の、「地下鉄駅を中心にしたホームズゆかりの地案内」のコンテンツで、リストにしてくださっています。みっちょんさんありがとうございます。
現地探訪はこちらの本を基に行っています。(本文ではFSLと略しています。)
Finding Sherlock's London: Travel Guide to over 200 Sites in London
- 作者: Thomas Bruce Wheeler
- 出版社/メーカー: Iuniverse Inc
- 発売日: 2003/09
- メディア: ペーパーバック
- 出版社/メーカー: インターチャネル・ホロン
- 発売日: 1998/02/06
- メディア: ソフトウェア
その他に参考にしている本はこちら。
Sherlock Holmes in London: A Photographic Record of Conan Doyle's Stories
- 作者: Charles Viney
- 出版社/メーカー: Smithmark Pub
- 発売日: 1995/09
- メディア: ハードカバー
この本は日本語訳も出ているそうです。
シャーロック・ホームズの見たロンドン―写真に記録された名探偵の世界
- 作者: チャールズ ヴァイニー
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1997/03
- メディア: 文庫
原典にあたるときはこちらの新注釈付ホームズ全集を使っています。注釈があるので場所の特定に困ったときなど助かっています。
The New Annotated Sherlock Holmes 150th Anniversary: The Short Stories
- 作者: Arthur Conan, Sir Doyle, Leslie S. Klinger
- 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
- 発売日: 2004/11/08
- メディア: ハードカバー
アイリーンについては、よく読んでないせいかもしれませんが、人となりがよく解りません。
ホームズがどこに惚れているのか、全く解りません。詳しく書いてあるところがあるのでしょうか?
by 降龍十八章 (2007-12-10 13:49)
降龍さん、こんにちは。
ホームズがアイリーンに惚れているというファンは多く、パロディのネタにもなっているのですが、私はどちらかというと、男女の恋愛感情というよりは好敵手への敬愛といった側面が強いと思います。
by Tomo (2007-12-13 20:57)
セントジョーンズウッドのその辺り、私の通勤路です(笑)
最初の家毎日見てます。なんか古そうだなーと外見からして思ってたんですが、そんな由緒のあるものでしたか。
ホームズは小学生の頃激はまりして、鬼のように一気に全部読みましたが、自分が今ホームズに出ている場所に住んでいると思うと、不思議な感じがしますね。(笑)
by Nanake (2007-12-16 09:04)
Nanakeさん、こんにちは。
このあたりもいいところですよね。私も本当はベーカー街に住みたかったのですが、学校から遠いのでラッセルスクエアにしてしまいました。そういえば、Nanakeさんは昔はベーカー街が通学路だったんですよね。
ロンドンのいいところは100年前の地名やビルがまだあることですね。ホームズに出てくる場所がこんなに残ってるというのはすごいことだと感心しました。
by Tomo (2007-12-16 09:53)
このあたり人がすくないね~
by りっか (2010-05-11 11:15)
>りっかさん、こんばんは
この辺り確かにあまり人が歩いてませんでした。写真を載せるときに人が写ってないのを選ぶのも確かですが。
by Tomo (2010-05-16 23:03)