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ホームズゆかりの地案内:「クーム・トレーシー(ボヴィ・トレーシー)」 [ ┣「ゆかりの地」案内]

 クーム・トレーシー(ボヴィ・トレーシー)

先日紹介したダートムアに行った際に、ボヴィ・トレーシーという街にも行ってきました。ここに行ったのは偶然だったのですが、そういえば何か聞いたことがあるかもと思っていたら、クーム・トレーシーという名前で「バスカヴィル家の犬」に登場していました。


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ワトソンがなぜ、ボヴィ・トレーシーをクーム・トレーシーという名前にしたのか、手元の資料で調べてみると、ベアリング・グールドがクーム・トレーシーにつけた註は、「湿原の東にボーヴェイ・トレーシーという町があり、この町がワトソンの言うクーム・トレーシーのことであろう。クーム・トレーシーは(Coombe Tracey)というのは、単純にウィディカム(Widecombe)とボーヴェイ・トレーシー(Bovey Tracey)をくっつけてこしらえたものであろう。」(ちくま文庫「詳注版シャーロック・ホームズ全集5巻」P579)となっています。Widecombeというのはどこにあるのか調べてみると、下の地図のようにボヴィ・トレーシーから西へダートムアへ入ったところのようです。


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上に引いた註によれば、クーム・トレーシーにはレストレードを出迎えた鉄道駅があった大きな町だったということで、クーム・トレーシーはボヴィ・トレーシーとしてあてはまっているとのこと。ちなみに、このウィディカムについて、ベアリング・グールドは別の註で、「モーティマー先生の本拠のあるグリンペンの村」の註に、「地図を良くみると、ウィディカム・イン・ザ・ムーアという寒村があり、「グリンペンの村」とはこのことではないかと思われる。」(同P389)と書いています。

では、クーム・トレーシーに言及しているシーンを見ていきたいと思います。

バスカヴィル家の犬
延原訳登場シーン:
「先代さまはあの朝お手紙をお受けとりになりました。あの通りご交際がおひろいうえに、ご親切なかたでございましたから、何かごたごたがありますと、みんなで 先代さまへ持ちこんでまいります。ですから、ふだんお手紙はたくさん参りましたけれども、あの朝にかぎりましてなぜか一通しかございませんでした。それで 珍しいと思いましたので覚えておりますのですが、クーム・トレーシーの消印のございます女文字の手紙でございました」(執事のバリモアの証言。)

(中略)「あっ、ローラ・ライオンズがいますよ。これなら頭文字が L.L. ですね。しかし住んでいるのはクーム・トレーシーですよ」(ワトソンからL・Lについて聞かれたモーティマー医師の答え。)

(中略)「明朝さっそくクーム・トレーシーへ出かけるのだ。そしてローラ・ライオンズ夫人といういかがわしい評判のある女に会ったら、このわからないことだらけの事件に、一新生面をひらくことができるに違いない。」(上を聞いたワトソンの日記の記述。)

(中略)「食物はどうして手にいれているのだろうね」
「セルデンの申しますには、少年をひとり連れていまして、その少年がなんでも必要な品を運んできますのだそうで、たぶんクーム・トレーシーあたりから持ってまいりますのでございましょう」(ワトソン博士がバリモアに湿原にいるもう一人の謎の人物について聞いているシーン。)

(中略)前日、私が二つの重大事件にでくわしたことはすでに述べた。一つはクーム・トレーシーのローラ・ライオンズ夫人から故チャールズ卿に手紙をおくって指定した 時と場所とが、故人の最期をとげた時と場所とにぴたりと一致していることであって、もう一つは、沼沢地の石室にひそんで、そのへんを徘徊している怪しい人物のあることだ。(ワトソンの回想)

さて、十月十七日の晩、すなわち昨夜だが、私はローラ・ライオンズ夫人のことを聞き知ったけれども、その晩はモーティマー 君がおそくまでカードをたたかわしていたので、そのことをヘンリー卿の耳にいれる機会がなかった。だが朝食のとき私はその話をして、いっしょにクーム・トレーシーへいってみないかとさそってみた。すると卿ははじめはだいぶ乗り気であったが、考えてから一人でいったほうがよくはないかといいだし、私もなるほ どと気がついた。(ワトソンの回想)

 

こちらがボヴィ・トレーシーの風景です。

DSC_3356.jpg

遙かにダートムアの山を臨めます。

 

DSC_3349.jpg

町の中は花が多く、小さな建物が多いこぢんまりとした印象です。レストレードが降り立った鉄道駅がある大きな町のはずですが、現在はどうなっているのでしょうか。地図を見ると現在は、鉄道の路線は走っていないようです。

駅がないと上記のクーム・トレーシー=ボヴィ・トレーシー説が覆ってしまいますので、Bradshawの1907年の鉄道路線図を見てみると、Boveyという字は見えるのですが、近くにはBovey Heathという町もあるようで、果たしてこれが当時のBovey Traceyの駅だったのかどうかちょっと定かではありません。Wikiで調べてみたところ、確かにこのBoveyの駅がBovey Traceyにあった駅だと言うことが分かりました。ちなみに路線はMoretonhampstead and South Devon Railwayで、終着駅だったようです。

DSC_3352.jpg

この町からダートムアに行ったのですが、ここでデヴォン州の名物、デヴォン・クリーム・ティーをいただきました。クリームティーといっても、ミルクティーのようなものではなく、スコーンにクロテッドクリームを塗って、紅茶と一緒にいただくというものでした。

creamtea.jpg

クロテッドクリームのうち、デヴォンで作られる物はデヴォンシャークリームと言うようで、友人にロンドンでも買えるか聞いたところ、滅多に買えないとのこと。 お土産として一つ購入してきました。

ホームズから話がそれてしまいましたが、偶然訪れた町で、デヴォンの味も楽しめましたし、こうして帰ってきてからもホームズのことで楽しめて得した気分です。

Bradshaw's Railway Map 1907: Great Britain & Ireland: The Railway Network at Its Zenith

Bradshaw's Railway Map 1907: Great Britain & Ireland: The Railway Network at Its Zenith

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: Old House Books
  • 発売日: 2006/12/15
  • メディア: 地図

 


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コメント 4

みっちょん

1907年のブラッドショーの地図があるんですね。
地理が苦手なので活用出来るかどうか判りませんが
頼んでみます。

クロテッドクリームをぬったスコーンの美味しそうなこと。

by みっちょん (2008-12-17 21:07) 

Tomo

>みっちょんさま、こんばんは。

実は私は1907年バージョンしかもっておらず、確かもう少し古い物があったと記憶していてこちらも見てみたいと思っていました。

たしかにこの地図は州境などか書いてないので、だいたいの場所で探すしかないのがちょっとつかいずらいです。でも、鉄道だけで毛細血管のようになっているので、さらに地名などをいれる余地はないかもしれません。

クロテッドクリームはさらっとして美味でした。
by Tomo (2008-12-17 22:17) 

Betty

綺麗な街ですね☆花が溢れているのが素敵です

「クロテッドクリーム」聞いたことないです@@!
イギリスへ行ったら「Afternoon Tea」ですネ♪
by Betty (2008-12-18 09:58) 

Tomo

>Bettyさん、こんばんは

英国の街はどこも花が多いのですが、ここは特に綺麗でした。こぢんまりした落ち着いた田舎町といった風情です。

クロテッドクリームはバターとクリームの間くらいの堅さで、ふんわりして美味しかったですよ。
アフターヌーンティーはかなりお腹いっぱいになるのでお昼抜きかつ夜も抜きになる可能性があります。
by Tomo (2008-12-18 23:50) 

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