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交渉術 [読書(自己啓発)]

元外務相の情報館、佐藤優さんの交渉に関する本です。

交渉術

交渉術

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/01
  • メディア: 単行本

交渉術というタイトルからは、交渉の「術」、すなわち体系化されたテクニックが学べるのかと期待させられ、事実、序章では交渉を3つのカテゴリー(「交渉をしないための交渉術」、「暴力で相手を押さえつける交渉術」、「取引による交渉術」)に分類したり、聖書を引き合いに出して神との交渉について述べたり、「交渉術に関して、理論と実践の両面について、論理整合性を崩さずに、かつ実用的な言説を展開した書物」(P17)を目指して書かれたものと期待が高まります。

しかし、次の章からは佐藤氏自身がかかわった北方領土交渉を中心としたソ連・ロシアとの外交の表裏が詳細に描かれていき、交渉の実践については事例から学べるものの、理論については置き去りにされた印象を持ってしまいます。最終章を読むまでは、タイトルを「日露外交の裏側」 とかにしたほうがより本書の主題に近いのではないかと思ってしまいます。

こうした読後感を持って読み終わるのかと思った最終章で、これらの外交交渉の総括が行われ、そこで改めて交渉術とはということが描かれるにいたり、これまでの実践からどのような理論を導き出せるのかが分かる仕組みになっていたということに気がつきます。例えば次のような記述も事例を読んだことでよりよく理解できたように思いました。

「何も見返りを求めず、相手の懐に入ることによって、自己の利益を極大化するのが交渉の弁証法」(P360)

「人間は欲望をもつ存在だ。その欲望にどのようにつけ込んでいくのかが交渉術の要諦なのである。(中略)交渉術の研究を裏側から見るならば、欲望の研究でもある。」(P392)

「ゲンナにいつも言われたことは、二つだった。一つは「過去の歴史をよく勉強しろ。現在、起きていること、また、近未来に起きることは、必ず過去によく似た歴史のひな形がある。それを押さえておけば、情勢分析を誤ることはない。」ということだった。二つ目は「人間研究を怠るな。その人間の心理をよく観察せよ。特に、嫉妬、私怨についての調査を怠るな」ということだった。」(P396)

それでも、まだ交渉「術」として、体系だった理論が語られたとまではいっていないのですが、上のようなことを知ることができただけでも、読んだ甲斐があったと思います。

また、官僚と政治家の実像も生々しく書かれており、いかにマスコミの作るイメージだけでものごとをみることが危険なのか、ということに改めて気がついたことも収穫でした。どちらが正しかったかは、判断できませんが、鈴木宗男氏に対する佐藤氏の視点には一定の真の姿がでているようにも思えます。両面からの視点がいつも必要であるということを再認識しました。

以前読んだ交渉術の本も、体系だったものではなく事例からヒントを導き、それを羅列していくという手法でした。論理的体系を解説した交渉の本もあるのかと思いますが、交渉という性格上、理論と実践のほどよいミックスはやはり必要なのだと思います。次はもう少し理論の方に寄った本を読んでみたいと思います。

これまで読んだ交渉に関する本。


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コメント 2

Yuki

お仕事にも役に立ちそうな題目ですね!^^
by Yuki (2009-04-18 21:43) 

Tomo

>Yukiさん、こんばんは。

私の仕事的には役に立ちそうなこともいろいろありました。仕事によってはちょっと当てはまらないこともあるかもしれないですね。
by Tomo (2009-04-19 18:02) 

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