SSブログ

沈まぬ太陽(四)(五)会長室編 [読書(楽しみ)]

組合活動をしたことでアフリカをたらい回しにされ、帰国してからは御巣高山の事故にあったご遺族担当係りを勤め、と不遇の会社人生を送ってきた恩地元。

御巣高山事故を重く見た時の首相が招聘したのが関西の紡績企業の会長、国見氏。国見氏は分裂した国民航空を一つにまとめ、空の安全を守るという使命を首相から与えられ、お国のためにという意識をもって、国民航空再建に取り組むことになりました。そして、組合統合の重要な人物となりうるということで、恩地も会長室に抜擢されます。

沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫
沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1999/09
  • メディア: 単行本

ご用組合である新生組合を食い物に私腹を肥やす人々と、敢然と立ち向かう恩地。政治家をも巻き込んだ国民航空の再建劇ですが、国見氏のまじめな一途な性格が徒となり、思うようにすすみません。

最後の展開というのは、個人的にはあまり納得のいくものではなく、ルポではなく小説という体裁を取ったからにはもうすこし救いのある結末にしてくれてもよかったのにと思ってしまいます。

もう一つ感じたのは、モラルを失った人間がいかに醜いかということ。自分の地位や財産のために所属する企業を食い物にしていく人々がたくさん登場しますが、見ているだけで不快になります。この話は国民航空という一企業の話ですが、こうした構図はいまや(というかいつでもとうべきか)国全体にはびこっているように思えます。

こうした醜い人間にならなりたくないとは思いますが、この物語の結末を見ると、恩地のように信念を貫き通すことだけでは何も変わらないのかと思ってしまい、ちょっと救いのないような気持ちになってしまいました。

 


nice!(4)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 4

コメント 6

シゲル

最後まで読まれたんですね。
3巻で終わりだったんですが、あまりにも終わりが残念とか厳しいと
いうことで、続きができたと聞いたことがあります。
彼女の作品は、現実に起こっている人間のエゴが悲しいぐらい
描写されているためショックを受けました。
そのなかでも女系家族は比較的軽めなんで読みやすいと思います。
ただ、個人的には、大地の子とか白い巨塔のほうが同じく重たいので好きですね。
by シゲル (2010-03-27 08:40) 

as

読破お疲れ様でした。救いのない最後という噂は聞いていましたが、やはり小説もリアルな現実をそのまま写しこんだものだったんですね・・・。小説だからこそ別のラストを望む人と、リアルな世界をそのまま描いて欲しいというリクエストと、半々ですからね。しかしながらコレだけの思い作品を次々と出してくる山崎さん、凄すぎます。
by as (2010-03-27 21:16) 

Pace

5巻まで全て読破されたんですね!
人間の醜さ…多かれ少なかれ、誰しもが持っているとは
思うのですが、それを抑えて行動できるよう理性的で
ありたいですよね(’’) 
ラストが救いようのないお話とのことですが、色々考えさせ
られる小説のようですので、やはりいずれ読んでみたいと
思います。
by Pace (2010-03-28 19:41) 

Tomo

>シゲルさん、こんばんは。

そうだったんですね。確かに3巻でおわったらつらすぎますが、この5巻の最後もかなりつらいものでした。人間のエゴをここまで見せつけられて、しかも特に救いのある展開でもないのがちょっと・・・という感じでした。さらに読んでみるか悩んでしまいますが、もう一つくらい読んでみて決めたいと思います。
by Tomo (2010-04-02 00:47) 

Tomo

>asさん、こんばんは。

そうなんです、リアルな現実で終わってました。この作品、多分現実にあったことをかなりリアルに再現しているんだと思いますが、小説にしたのだから、最後は希望を見せてくれてもいいと思いました。山崎さん、もう少し読んでみようと思います。
by Tomo (2010-04-02 00:51) 

Tomo

>Paceさん、こんばんは。

ストーリーの展開はかなり引き込まれますので、一読をおすすめします。この会長室編はそれなりに希望もありますし、醜い人だけではなく、筋の通った人間のあり方も読むことができました。
ラストも救いのないという表現がいいのか分かりませんが、世の中、必ずしも勧善懲悪の世界ではないということは感じさせられました。
by Tomo (2010-04-02 00:57) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。