オーファーザー [読書(楽しみ)]
ちょっと前に読みました。
伊坂さんの本は、ストーリーととぼけたキャラとその会話が魅力だと思ってますが、この本は設定がまた秀逸でした。
主人公は高校生なのですが、お父さんが4人いるという設定。誰の子供か分からないまま母と4人の父親と暮らしています。
その4人がそれぞれ個性があって面白く、それぞれ違った見方で子育てをしていて、主人公なりにそれを受け止めているのが面白い。そして、事件に巻き込まれていくのですが、その中でそれぞれの父からの教えを思いだしているし、父達も得意を活かして助けてくれます。
伊坂さんの作品らしく、最後はすっきりとして良い読後感が得られました。
ロスト・シンボル(上)、(下) [読書(楽しみ)]
出張に出る前に、空港の本屋で目に付いた面白そうな本や雑誌を買い込むのが習慣になっています。
今回も成田空港で本・雑誌をかなり買い込んできました。
だいたい自己啓発系、ミステリー、スポーツ系、といった感じで買っていますが、今回ミステリー部門で購入してきたのがダン・ブラウンの「ロスト・シンボル」。
「天使と悪魔」、「ダヴィンチ・コード」に続くラングドンシリーズの3作目となります。
前二冊はキリスト教が中心となっていましたが、今回はフリーメイソンにスポットが当たっています。そして何よりも読んでいて楽しかったのが、ワシントンDCが舞台になっていること。
ワシントンDCにはかれこれ8年くらい前に2年ほど仕事のために住んでいたことがありますが、そのときお馴染みの場所や建物がたくさん登場するので臨場感をももって読めました。とはいえ、行ったことのない建物もかなり出てくるし、知っていてもアクセスできない場所もかなり出てきて、住んでるときに読んでたらよかったですね。もしDCに行く機会があれば訪れてみたいです。
ストーリーですが、隠された歴史が明らかになったり、街や建造物に隠された暗号がたくさん出てきたりというのは、前作と共通します。展開もかなりスピーディーで、頭の中に映像が浮かんでくる、映画のような小説というのも共通するところでしょうか。(きっと映画化されるんでしょうね。DCの町並みが見られるなら是非見てみたいです。)
スケールの大きそうな事件に見えて、最後は意外と個人的なレベルで引き起こされていることが分かったりするのも一つのパターンなのかもしれません。
個人的には、ちょっと先が読めてしまったため、どんでん返しの爽快感は「ダヴィンチ・コード」よりはちょっと劣るものの、ワシントンDCの臨場感もあるので、かなり楽しめた本だったと思います。
フリーメイソンはこれまで2作で登場する秘密結社とは違う描かれ方をしているのはちょっと意外でした。かなり肯定的に描かれています。
しかし、これだけのことを調べて書くというのはかなりのエネルギーなのではないかと思います。次回作も期待したいのですが、また時間がかかるかもしれないですね。
沈まぬ太陽(四)(五)会長室編 [読書(楽しみ)]
組合活動をしたことでアフリカをたらい回しにされ、帰国してからは御巣高山の事故にあったご遺族担当係りを勤め、と不遇の会社人生を送ってきた恩地元。
御巣高山事故を重く見た時の首相が招聘したのが関西の紡績企業の会長、国見氏。国見氏は分裂した国民航空を一つにまとめ、空の安全を守るという使命を首相から与えられ、お国のためにという意識をもって、国民航空再建に取り組むことになりました。そして、組合統合の重要な人物となりうるということで、恩地も会長室に抜擢されます。
ご用組合である新生組合を食い物に私腹を肥やす人々と、敢然と立ち向かう恩地。政治家をも巻き込んだ国民航空の再建劇ですが、国見氏のまじめな一途な性格が徒となり、思うようにすすみません。
最後の展開というのは、個人的にはあまり納得のいくものではなく、ルポではなく小説という体裁を取ったからにはもうすこし救いのある結末にしてくれてもよかったのにと思ってしまいます。
もう一つ感じたのは、モラルを失った人間がいかに醜いかということ。自分の地位や財産のために所属する企業を食い物にしていく人々がたくさん登場しますが、見ているだけで不快になります。この話は国民航空という一企業の話ですが、こうした構図はいまや(というかいつでもとうべきか)国全体にはびこっているように思えます。
こうした醜い人間にならなりたくないとは思いますが、この物語の結末を見ると、恩地のように信念を貫き通すことだけでは何も変わらないのかと思ってしまい、ちょっと救いのないような気持ちになってしまいました。
沈まぬ太陽(三)御巣鷹山編 [読書(楽しみ)]
沈まぬ太陽も三冊目を読み終えました。
アフリカ編の恩地も悲惨だと思いましたが、この巻では史上最悪の飛行機事故が発生し500人以上の命が奪われます。事故現場の描写も生々しいのですが、それ以上に、残された遺族がどんなにむごたらしい姿になってしまおうが家に遺体を連れて帰ろうとする様子には圧倒されました。また、残された家族の喪失感も、多数の家族の様子を淡々と描くことでリアルに迫ってきました。
恩地も遺族係として登場しますが、この巻はほとんどが墜落事故のさまざまな局面を描くことに費やされます。まるで御巣鷹山事故のルポルタージュのよう。
仕事柄、飛行機に乗ることは非常に多いのですが、この巻を読むと、今後乗るときにちょっと恐怖を持ちそうです。もちろん、こんな事故が起きるのはほとんどなく、飛行機は非常に安全な乗り物だとは分かっているのですが。
遺族会が形成されて、恩地の勤める国民航空と対決していく展開となります。最後は、家族を亡くした男性がお遍路さんに旅立つところを恩地が見送るシーンで終わります。なんともやるせないシーンでした。
あと二巻、どんな展開になるのか楽しみです。
沈まぬ太陽(二)アフリカ編・下 [読書(楽しみ)]
沈まぬ太陽の2巻を読みました。
一巻では、主人公がなぜ僻地にたらい回しにされたのか、その原因となる組合活動のことが詳しく描かれました。この巻では、恩地がカラチ、テヘラン、ナイロビでいかに暮らしてきたのか、その暮らしぶりが描かれます。
今からは想像もつかない当時のアフリカ暮らしや在留邦人のエピソードなどが興味深いところです。仕事柄、こうした場所に出張したり、駐在したりする機会も多いため、今とは違う、当時の苦労がしれたのは収穫でした。
こうした苦しい日々を乗り越えて、この巻の最後で、恩地はやっと日本に復帰できることになりました。しかし、復帰後の苦労も予感させる展開です。短期間に起こった飛行機事故と空の安全をまもらなければならない組合。ついに日本に復帰となった恩地がどんな活躍を見せてくれるのか、次巻が楽しみです。
沈まぬ太陽(一)アフリカ編・上 [読書(楽しみ)]
昨年映画にもなっていた沈まぬ太陽。
なんとなくストーリーは知っていたのですが、読んだことはありませんでした。
なんとなくイメージとしては最近の話なのかと思っていましたが、結構古い時代の設定だと言うことが分かりました。主人公の恩地元は中学生で戦後を迎えて、30歳過ぎということは60年代くらいなのでしょうか。
組合の委員長をだまし討ち的に引き受けさせられ、本気で取り組みストを打ち、任期を終えたとたんにパキスタンに二年の約束で赴任したものの、任期間際にイランに送られ、そのままケニアに。
このアフリカ編・上巻では、そんな恩地のケニアに来るまでの遍歴が綴られます。意図せず組合の委員長を引き受けたばかりに、そしてまっすぐに取り組んだばっかりに、ここまでの仕打ちを受けるという理不尽を感じさせられる展開でした。
私もメーデー生まれということもあり(というのは本当はあんまり関係ないのですが)、一年間、会社の組合の委員長をしていたことがありましたので、我が身のことのように恩地に思い入れを感じてしまいました。
とはいえ、時代や環境が違うこともあり、組合の役割やできること、会社との関係もこの頃とはずいぶんと変わってきているということも実感しました。また、私自身途上国に頻繁に行く仕事をしていますが、当時のパキスタンやケニアでの生活は、今では想像もつかないくらい大変だっただろうことも伺えました。
この巻ではイランに行くところまでが描かれますが、下巻の展開が楽しみです。
赤い指 [読書(楽しみ)]
東野圭吾さんの本です。
最初から犯人が分かっている、というか犯人側の家族の視点からの物語がすすみます。これに捜査する警察側からの物語が重なって、最後に犯人家族と警察が対峙して・・・というのがおおまかなストーリーです。
警察側の登場人物が魅力的というのはあるのですが(最後のエピソードでこちら側のストーリーも完結して気持ちよいです)、犯人家族側、特に中心となる父親の心理描写が秀逸で、犯罪を犯すとこんな気持ちになるんだろうなと思わされます。
ということで、ミステリーなのであまり詳しいことは書きませんが、最後の最後まで結構ストレートなストーリーだと思ってちょっと物足りないかななどと思っていたら、実は大きなどんでん返しがあって、ちょっと意表をつかれました。
ここのところ伊坂幸太郎さんの本を読むようになってから、きれいにだまされる快感というか、やられたーっ、という感触がないとちょっと物足りない気持ちになっているようです。そんなにきれいにやられる作品って実際はそんなにないのですが。そういう意味では、この「赤い指」は途中まで物足りなさも感じてしまったのですが、最後には気持ちよくどんでん返ししてくれて楽しめました。それもただ奇抜なだけではなく、家族の愛情という深みもあったのでより印象に残りました。
東野さんの本も、今後少しずつ読んでいきたいと思いました。次は、出張に持って行くには厚すぎた「白夜行」かな。
SOSの猿 [読書(楽しみ)]
伊坂幸太郎さんの最新作(だと思います。多作な方なので・・・)
モダンタイムス やゴールデンスランバーは、軽妙な会話は楽しめるし、ストーリーも読めなくて楽しめるのですが、時間軸をずらして最後にどんでん返し、というそれ以前の作品にあった楽しみという点ではちょっとものたりなかったような気がしました。(でも、もちろん面白いのですが。)
その点で、このSOSの猿はそうした楽しみがあって、伊坂さんの作品を読んだ醍醐味が味わえると思います。
読んでいる途中では、ちょっとファンタジー的なところもあってとまどったりしましたが、それが最後の最後で効いてきました。
お話は、幼なじみの息子の悪魔払いをする二郎とまじめ一徹なプログラムのバグを調査する五十嵐真の二人の話が交互に語られて進みます。その二つの話が最後にうまくかみ合ってきて、面白さが倍増していきます。
物語の鍵となるのが、タイトルにもある「猿」と関連している、 孫悟空。西安で、三蔵法師が天竺から持ち帰ったお経を研究したお寺を見に行ったこともあって、時期的にも不思議な縁を感じました。
ということで、久々に伊坂さんの作品に期待していた楽しさが味わえた作品だと思います。漫画との連動企画らしく、2月に発売される漫画「SARU」という作品と関係しているそうです。こちらも読んでみようと思います。
フィッシュストーリー [読書(楽しみ)]
伊坂幸太郎さんの本、ハードカバーで買おうかと思ってたら文庫化されていました。
短編が4作はいっていますが、そのうちの二つには盗んだものをメモにして残してあげるというちょっとかっこいい空き巣の黒澤がラッシュライフに続いて登場しています。
表題作の「フィッシュストーリー」は時間軸をうまくずらして、最後に一つになっていくという伊坂作品の醍醐味が味わえました。 最近読んだ本ではこうした気持ちよさがなかなかなかったように思えたので余計に楽しく読めたように思います。長編でもこんな爽快感がまた味わいたい。(最近の作品が嫌いという訳ではありません。)
「坂の上の雲」と日本人 [読書(楽しみ)]
「坂の上の雲」は昨年読破したのですが、NHKでドラマ化されることもありまた注目されているようですね。
出張用の本を買おうと空港の本屋さんに言ったら面白そうな本があったので購入したのがこちらでした。
「坂の上の雲」と司馬さんの歴史観などを解説した本でした。司馬さんの小説のスタイルや司馬さんがこの作品を書いていた当時の時代の雰囲気とそれに対する司馬さんの態度など、作品の背景が分かったのが収穫でした。
特に乃木将軍と伊地知参謀について、なぜ司馬さんが厳しく描いていたのか、というのは違った側面も提示されていて理解が進んだように思います。
「坂の上の雲」を読んでしばらくしてから読むと復習にもなっておすすめです。