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波の上の魔術師 [読書(楽しみ)]

石田衣良氏の作品です。株のことを取り扱っていて、彼の知識の幅の広さに驚きました。

主人公は白戸則道。就職浪人中で、仕送りとパチンコで暮らす日々。そんな彼が謎の老人に秘書として採用され、マーケット(株式の)の世界に入っていくというお話。

前半では主人公が老人にマーケットについて鍛えられていく過程が描かれ、後半は老人の目的が明らかになり最後はターゲットである銀行に対する仕掛けが描かれます。

主人公の自分目線で書かれているし、キャラクターとして芯が強くて自分で考えるタイプということもありIWGPシリーズと少し雰囲気が似ていますが、ストリートの世界とマーケットの世界という全く異なる世界が描かれていますし、登場人物もすくなくシンプルな点は大きく違っています。

株取引のことが分かりやすく書かれているのですが、主人公の成長ぶりが順調すぎる気もするし、最後の仕掛けも、銀行そのものへのダメージよりも株価下落によって儲ける方が主目的になっているような感じがして、ちょっと矛盾を感じたりしました。あと、石田衣良さんの作品でよくあるのですが、これからどんな結末になるのかをクライマックスの前でちょろっと明かしてしまうということがあって、この作品でもありました。主人公が全て終わってから回想しているという形なので、語っている時にはすべての事が終わっているということで、その結末についてちょっとほのめかしているところがあります。何も知らずに結末に向かっていくのと、こうやってほのめかされるのとでは、私としては何も知らない方がいいと思ってしまうのですが、どうなんでしょう。技法として一定の効果があるということなのでしょうか。

若者がある日老人(謎に満ちた)に見いだされ、教えを受けて成長していくというのはある種の憧れだと思います。現在はこうした師弟関係が成り立ちにくい時代のように思えますし、こんなことが起こったらいいなと言うのは誰しも考えるシチュエーションですよね。ジャッキー・チェンの作品なんかでもよくあるし。そういう意味でも楽しむことができました。

波のうえの魔術師

波のうえの魔術師

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/08
  • メディア: 単行本


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コメント 2

こんばんは
この作品は石田さんの作品でも評価の高いコメントを
多く読んでいて気になっていました。
古本屋さんで手に取ったのですが、私は書籍裏の「あらすじ」を
読んで購入まで至らなかった作品です。
ん~Tomoさんの評価を読ませて頂いて
いつかは読んでみようかな~という感じです
今未読小説が山積み状態でコツコツ制覇しているので
まず・・それをやっつけないと~(^▽^;
by (2007-09-26 20:32) 

Tomo

Bettyさん、コメントありがとうございます。
この本はさっと読むにはとても良かったと思いますよ。メッセージ的にはIWGPシリーズの方が強くて好きですけどね。アキハバラDeepと同じくらい楽しめたかな。私も本は山積みにして、さらに同時並行で読み進めるタイプです。日本に帰ってきてまた山のように本が読めるのが楽しみです。
by Tomo (2007-09-29 03:20) 

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