シャーロック・ホームズのドキュメント [ ┗研究書・パスティーシュ]
Dr.ワトスンが公表をひかえていたホームズの事件簿がさまざまな経緯を経て発見された、というのはホームズの比較的本格的なパスティーシュが踏まえている設定です。私が個人的に最も本格的なパスティーシュだと思っているジューン・トムスンのホームズシリーズも、この設定を忠実に踏まえています。
ジューン・トムスンのホームズシリーズは以前にも「シャーロック・ホームズの秘密ファイル」をこちらでも紹介していますし、ホームズとワトスンの伝記についても紹介しています。
今回読んだのは彼女の4作目のホームズ・シリーズとなります。
上述の「シャーロック・ホームズの秘密ファイル」が第一作で、この「ドキュメント」は4作目にあたります。第二、三作目の「クロニクル」、「ジャーナル」もすでに読んでいますが、こちらで紹介していませんでした。
ホームズシリーズの醍醐味は短編作品にあるとも言えるのですが、このトムスン・ホームズシリーズもすべて短編によって構成されています。そして、どの事件も、正典で言及されていながら語られていない事件の記録となっていますし、それぞれ発表されていなかった理由についても記されています。
本作品には7編の短編が収録されています。どの事件も、ホームズの世界観を維持しつつもオリジナルな展開を見せてくれます。
語られざる事件の中でも、最も印象に残り是非読んでみたい事件の一つは、「六つのナポレオン」の中で「アバネッティ家の恐ろしい事件に僕が初めて気がついたのは、暑い日にパセリがバターの中へ沈んだその深さのおかげだった」として語られている事件だったのですが、その事件簿が「ウィンブルドンの惨劇」として本書に収録されているのが嬉しいところです。
このシリーズの秀逸なところは、正典に登場する語られざる事件についての記載を忠実に取り入れつつ、それぞれの事件を独創性豊かに描き出し、なおかつホームズの世界観を維持しているところにあると思います。正典に比べると若干、ホームズやワトスンの性格描写が情緒的なところが見られる嫌いはありますが、いずれも正典の延長上にあるため、特に違和感は感じません。
このシリーズは、いまだに創元推理文庫で手にはいるのですが、なぜか「ドキュメント」だけはほとんど本屋で見かけることがありません。今回は古本で見つけることができてラッキーでした。 こうした展開を見せる余地(語られざる事件)を残したホームズシリーズの偉大さを改めて感じてしまいます。
手に入りにくい本を見つけたときって、嬉しいですよね!
この本、面白そうです。(*^-^)
by Yuki (2009-02-18 00:00)
「パセリ」の事件があるんですね! 早く読みたいですが、手に入れにくいのですか…。私は第三作の『ジャーナル』をカートに入れたとこです~^^;。
by ぐうたらぅ (2009-02-18 02:33)
まず、正典を読み直さないと記憶も曖昧です・・><;
この本も読みたいです!
by Betty (2009-02-18 09:29)
>Yukiさん、こんばんは
貴重な本を、安く買えると嬉しくなります。このシリーズはホームズものとしては上位に入る面白さと思います。
by Tomo (2009-02-19 01:52)
>ぐうたらぅさん、こんばんは。
パセリの話はなぜか印象に残ってましたが、なかなか面白く仕上げてくれてると思います。もう少しひねったトリックでもよかったかもしれませんが、正典を考えるとこのくらいでよいのかもしれません。でも、その後のホームズの対応については、もう少し工夫して欲しかったです。
by Tomo (2009-02-19 01:54)
>Bettyさん、こんばんは。
正典、機会があれば是非読み直してみてください。このシリーズを先に読んでみるのもありだと思います。
by Tomo (2009-02-19 01:55)