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終末のフール [読書(楽しみ)]

伊坂幸太郎さん、最新の文庫を読んでみました。

終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)

  • 作者: 伊坂幸太郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/06/26
  • メディア: 文庫

 

舞台は伊坂さんの作品ではすっかりおなじみの仙台近く。8年後に隕石が地球に衝突して終末が訪れることが分かってから5年が経ったという設定で、ある団地に住む人々がどのように終末を受け入れて、どのように生きるのか、を描いた短編集です。

同じ団地の人々を描いているので、それぞれの作品に別の作品の主人公がちょっとづつ顔を出すのですが、伊坂さんのことなので最後にそれらが一つにまとまって、何かが起きるのではと期待させてくれます。

設定としては突拍子もない、でもあり得ないわけではないという設定なのですが、人々が終末についての情報をどう受け止めたのか、どう感じているのか、これからどうしようか考える姿がリアルなのですんなりと受け入れられます。と、同時に、こんなニュースを聞いたら自分ならどうするのか、世界はどうなってしまうのか、考えさせられます。

隕石の衝突が明らかになってから5年経っている時点での話なのですが、終末が来ることが明らかになってからしばらくは大パニックにおそわれたことが登場人物の話から伺えます。混乱で秩序がなくなり、家族を失っている登場人物も多数。5年経って、それもだいぶ落ち着いたというのが、この話の舞台となっています。

終末が8年後というのが微妙な設定ですよね。映画の「アルマゲドン」や「ディープインパクト」を思い出しますが、それらよりも残された時間が長いというのがポイントでしょうか。パニックも起こるし、絶望した人が自殺もするし、暴徒が焦点を襲うし、妙な宗教がはやるし、それでも5年も経つと治安も回復して流通も回復してたり。

印象に残ったところ。

「私が読んだ本に、確かビジネス書だったと思うんですけど、書いてあったんです。『新しいことをはじめるには、三人の人に意見を聞きなさい』って。」「三人?」「そうなんです。まずは、尊敬している人。次が、自分には理解できない人。三人目はこれから新しく出会う人。」(P159)

「苗場君ってさ、明日死ぬって言われたらどうする?」俳優は脈絡もなく、そんな質問をしていた。「変わりませんよ」苗場山の答えはそっけなかった。「変わらないって、どうすんの?」「ぼくにできるのは、ローキックと左フックしかないですから。」「それって練習の話でしょ?というかさ、明日死ぬのに、そんなことするわけ」可笑しいなあ、と俳優は笑ったようだ。「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」文字だから想像するほかないけれど、苗場さんの口調は丁寧だったに違いない。「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」(P220)

「お金っていうのは有意義な研究じゃなくて、面白そうな研究とか役に立ちそうな研究に、集まるんだ」「『役に立ちそう』と『有意義』は同じ意味だろ」「矢部君、本気で言ってるの?」彼はまた言った。「全然違うって、役に立つ、のと、役に立ちそう、というのは別物だよ。偉い人と、偉そうな人ってのが全然違うのと同じでさ。」(P241) 

 

どの話も面白かったのですが、個人的にはスーパーの店主を主人公にした話も読みたかったですね。

 


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Pace

えー!!もう読んだのですか!?
は、早いです(^^;
文庫であるのですね。ハードしかないと思っていて、
私勘違いコメントしてしまいました。すみません。
8年ってほんとに微妙ですよね。そこらへんに
この物語のミソがありそうですね(’’)
by Pace (2009-07-02 00:19) 

Tomo

>Paceさん、こんばんは。

Paceさんのコメントの方が早くてびっくりしました。投稿して管理画面に移ったらもうコメントが!

つい先日、文庫版の発売だったようです。てっきりPaceさんは文庫化のことを言ってらっしゃったのかと思い、本屋にいったらありました。

いつもの話と違って、設定がSFっぽいからか、他の作品のキャラがちょい出演、というのはなかったようです。8年の5年目というのが絶妙な設定でした。
by Tomo (2009-07-02 00:28) 

お茶屋

三人の人に意見・・・たしかにその通り!かもしれないですね☆
とっても気になる作品です☆
by お茶屋 (2009-07-02 10:20) 

Tomo

>お茶屋さん、おはようございます。

この作品もとっても面白かったですよ。考えさせられます。
by Tomo (2009-07-08 05:56) 

Betty

ご無沙汰しています^^
今朝から、この本を読んでいます。
なかなか面白い設定ですよね。1話目の夫婦の描写など映像で見ているようです。
今後の展開が楽しみです。
by Betty (2009-07-16 15:21) 

Tomo

>Bettyさん、こんばんは。ご無沙汰でした。

設定が面白くて、自分があと数年しか生きられなかったらどうするか考えてしまいました。1話目の夫婦もまた登場しますよ。この相互につながってるのも伊坂さんのいいところですね。
by Tomo (2009-07-17 00:19) 

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