悪党 スペンサーシリーズ [読書(楽しみ)]
少し前に出されていたものですが、本屋でぱらぱらと見てみたらどうも未読だったようなので、購入してしまいました。
ストーリーは、ある女子大学生が殺害された事件で、投獄された黒人男性が本当に有罪だったのかスペンサーが調査する中で、真実を知られることをおそれた真犯人の関係者が妨害するというものです。正直なところ、スペンサーシリーズについては、ストーリーそのものの魅力はそれほど重要でないと思っています。シリーズを通じて描かれるスペンサーの美学のようなものを、いろいろな状況でどう表現されるかを楽しむものだと思っています。
本作では、スペンサーは銃撃されて、1年ほどリハビリを行います。恋人のスーザンが精神的そして財政的に、そして友人のホークがリハビリにつきあってスペンサーをサポートしています。スペンサーは、自分を強く持った孤高のヒーロー的な要素もあるのですが、実は、他人との関係性の中で、魅力を放っているのだと改めて感じさせられる作品でした。
他の探偵ものやハードボイルドとの違いであり、本シリーズの特徴となっているのは、スーザンとの会話シーンだと思います。ちょっとくどいところはあるのですが、この会話によって、事件解決の過程で示されるスペンサーの強さだけでない、スペンサーの精神性の高さが表される効果があります。
シリーズとしては、大いなるマンネリ的な域に達しつつあるのかもしれませんが、事件そのものへの興味と言うより、今やスペンサーの愛すべき、尊敬すべきキャラクターの発露への興味で読み続けているような気がしています。
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