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マニラの帝王 [読書(楽しみ)]

先日図書館に行ったらリサイクル本として、だれでも持って行ってよい本が置いてあるコーナーにあったのを見つけてもらってきました。

マニラの帝王

マニラの帝王

  • 作者: 太田 靖之
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 1995/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
マニラには何度か行ったことがありなじみがあったことから、あまり期待せずもらってきたのですが、読み始めたら一気に2時間くらいで読破してしまいました。
ストーリーは、マニラの日本大使館書記官、スラムの病院の医者、ナイトクラブの俄オーナーという3人の日本人青年のストーリーが少しずつ重なりながら展開される形で進みます。
読み終わって分かったのですが、この本はシリーズの3作目ということで、一冊目は真田広之の主演で映画化もされている「緊急呼び出しーエマージェンシーコール」という作品だそうです。そして、シリーズ等しての主人公はスラムの病院の医者の太田で、これはご本人をモデルにしているようだということも分かりました。ちなみに、著者の太田さんは、日本でサラリーマンをしたあとフィリピンに渡り、現地の医大を卒業し、フィリピンの医師国家試験に合格した物の、医師会業免許が出されないらしく、フィリピン政府と係争中だそうです。この本が書かれたのが10年前なので、その後は無事開業されているのでしょうか。
と言うわけでシリーズとしては太田医師が主人公のようですが、この作品ではナイトクラブのオーナーとなった森のストーリーがメインとなって進んでいきます。幼いときに母国に帰ってしまったフィリピン人の父親に、母の死を機に会うことを決意した森がフィリピンを訪ね、父の経営するナイトクラブで再会を果たしたその夜に、父が急死、急遽店を継ぐこととなってしまいまうという導入から、一気にバーの経営の中での様々な出来事が描かれていきます。そして、ある金持ちの息子に捨てられた妊婦を助けて、息子の結婚式をぶちこわしたことから、様々なトラブルに巻き込まれていくこととなるのですが、太田医師も同じ人物に関わり合いになり、嫌がらせを受けているストーリーが交錯し、最終的にはトラブルが解決されていくことになります。しかし、すべて解決した直後に、まったく些細なことから一転して悲劇的に終わってしまいます。(一応サスペンスなので詳細は書かないようにしています。)
ストーリーは三人の人生や生活に加えて、周りの人たちの背景も描かれるため、やや拡散した印象はありました。特に大使館員の内田の話は結局不幸に終わるだけなので、本来いらないのかもしれませんが、おそらく大使館員の対応に不満を持っていた著者としては入れたかったのかもしれないなーなどと想像してしまいました。
それを差し引いても、マニラの、我々外国人には少し狂ったように見える庶民の日常がここまでリアリティを持って描けている点は、それだけでも読む価値ありと思わされます。特にハッピーエンドで終わる寸前に、たった数十ペソのために起こる偶発的な殺人ですべてが失われてしまうということは、途上国における命の値段というものを強く感じさせられる展開だと思いました。現地の事情を熟知した著者ならではのマニラ観が反映されているように感じます。
他にシリーズがあれば、読んでみたいと思いました。

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