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「ホームズゆかりの地」案内:Oval [ ┣「ゆかりの地」案内]

Oval Underground Station P31-32


今回もテムズ川南岸地域の一つであるOval駅周辺のゆかりの地を紹介します。

もう少し下ったBrixton地域はあまり治安が良くないそうですが、Oval駅周辺はきれいな町並みでそれほど危ない地域ではなさそうな雰囲気でした。

 

1.Brixton Road, SW9

「緋色の研究」 FSLの記載:In A Study in Scarlet, Holmes placed an advertisement in the "Found" column of every morning paper. It read, "In Brixton Road, this morning, a plain gold wedding band...Apply Dr. Watson, 221B, Baker Street, between eight and nine this evening."

延原訳登場シーン:今朝ブリクストン通りのホワイト・ハート酒場とホランド・グローヴの中間の路上にて、金製カマボコ型結婚指輪一個拾得す。今夕八時より九時までにベーカー街二二一番Bワトスン博士まで申し出られたし。

通りの様子です。

ホームズが指輪を発見した場所の記載については、下の3で検証してみたいと思います。

2.Kennington Lane, SE11

「四つの署名」 FSLの記載:In The Sign of Four, Toby led Holmes and Watson in Kennington Lane, just east of the Oval.

延原訳登場シーン:私たちはストリータム、ブリクストン、カンバーウエルを突っきり、オーヴァル競技場の東がわを抜けてついにケニントン小路まで来た。

ホームズとワトソンは義足の男の後を、犬のトビーに追跡させて、自分たちも歩いてこの地域を探し回っていますので、作品中にもこの周辺の地名がたくさん登場しています。ただ、ちょっと今の地図だけでは、正確なルートがわかりにくいように思います。いずれ検証したいと思っています。

3.’White Hart Tavern' Brixton and Cranmer Road, SW9

「緋色の研究」
FSLの記載:
In A Study in Scarlet, Holmes placed an advertisement in the "Found" column of every morning paper. It read, "In Brixton Road...a plain gold wedding band, found in the roadway between the White Hart Tavern and Holland Grove." Based on this, the White Hart Tvern had to be on the corner of Brixton and Cranmer Roads.

延原訳登場シーン:「この広告を読んでみたまえ。あのあとですぐに、全市の新聞に僕が送ったものだがね」
 そういって彼が夕刊を投げてよこしたので、示されたところを見ると、拾得物広告欄の最初につぎのような広告が出ていた。

今朝ブリクストン通りのホワイト・ハート酒場とホランド・グローヴの中間の路上にて、金製カマボコ型結婚指輪一個拾得す。今夕八時より九時までにベーカー街二二一番Bワトスン博士まで申し出られたし。

 

こちらがCranmer RoadとBrixtonの交差する場所です。このビルのあたりが該当地域でしょうか。

Holland GroveについてFSLには何も書かれていないのですが、調べてみると通り名で、現存していることがわかり行ってみました。この交差点から歩いて5分ほどでした。

FSLの書きぶりによれば、この通りはCranmer Road同様、Brixton Roadにつながっている道で、CranmerとHolland Groveの間のBrixton Roadで指輪を拾ったと解釈できるのですが、Holland GroveはBrixtonと直接接していないため、位置関係に若干矛盾が生じます。またなぜFSLで、ホワイトハート食堂がCranmer RoadとBrixtonの角と特定したのかについては、根拠がよく分かりません。

ちなみに地図で見るとこのような位置関係となります。(フラッグの立っているところがHolland Groveで、その上に東西に走っているのがCranmer Road、その左手の南北に走る緑色の道がBrixton Roadです。)

Holland Grove

当時の地図を確認しても、Holland Groveがもう少し来たまで延びていてCranmer Roadと接しているだけで、Brixton Roadとはつながっていませんでした。

FSLでは、Cranmer RoadとBrixton Roadの角にホワイト・ハート酒場があるとしています(根拠は明示されていません)が、この場合中間の路上はBrixton Road上ではないように思えてしまいます。現在はこのエリアは住宅地になっていますが、このあたりということになるとワトソンの記載とは若干ずれてしまうようです。ちょうど良い地図がありましたので載せておきます。

南北が横になっています。上がBrixton Roadでこの地図の右側を縦に走るのがCranmer Rdで、You are hereの星印を下にちょっといったところにHolland Roadがあります。

ちなみにホワイト・ハート酒場とホランド・グローヴはドレッバーの遺体の発見者であるランス巡査の言葉の中でも登場しています。

延原訳登場シーン:ランスは馬毛の長椅子に腰をおろして、一言でもいいもらしてはならぬと決心したように、額に皺をよせた。「では最初のおこりから話しますが、私の受持は晩の十時から朝の六時までです。十一時ごろにホワイト・ハート酒場で喧嘩があっただけ、それ以外は巡回中すこしも異状はありませんでした。
 午前一時ごろに雨が降りだしましたが、ちょうどハリイ・マーチャーといって、これはホランド・グローヴ区の受持巡査なんですが、その男に会ったので、ヘンリエッタ街の角で立ち話をしました。

ヘンリエッタ街がヒントになるかと思いましたが、ヘンリエッタ街はあることにはあるのですが、ロンドンの別の地域(西のストラトフォード、中央のコベントガーデンにあります)なので、架空の通り名のようです。(Klinger註によればCavendish Squareにもあるそうです。)

遠回りになりますが、Holland Groveを南に出て、Vassall Rdを西に向かいBrixton Roadとぶつかるところから、Cranmer RdとBrixton Roadの交差点の間という可能性もあると思います。

ただ本当にホワイト・ハート酒場がこの場所にあったのかどうか分からないのでこの根拠がほしいところです。

さて、これ以上は考えようもないので、Klinger註を参照し、これまでの検証結果を確認しておきたいと思います。
註の100番でWhere Exactly was "Number 3, Lauriston Gardens”?という項目が立ててありました。

紹介の前に場所に関するワトソンの記述を見てみましょう。かれは次のように描写しています。

延原訳登場シーン:ロウリストン・ガーデン三番というのは、見るからに不吉なことでもおこりそうな家だった。通りからすこしひっこめてたてた四戸のうちの一戸で、二戸は塞がっており、二戸は空家になっていた。空家には窓掛一つないがらんとした窓が三段にわびしく並んでおり、曇った窓ガラスのところどころに貸家札の貼られているのが、白内障のような不気味な感じだった。家のまえはところどころ草などひょろひょろと生えている小さな前庭で、そのあいだに粘土と砂利とで堅めたらしい黄いろな小道が通じていた。

H.W.Bellは、Brixton Road上、道から少し引っ込んだところにある四戸の家であるとし、4戸が固まった家があった場所を特定し、場所はBrixton Roadの314〜320番地を候補としています。
M.Harrisonは、同様にBrixton Road上としていますが、152〜160番地にあった五戸の家の固まりがワトソンの記述にあっているとしています。

そして、バーナード・デービスさんの説がとりあげられていました。バーナードさんは、先日参加した南ロンドンツアーでガイドをしてくださった方です。
バーナードさんは、ワトソンの記述の家の内部の描写をつかって場所の特定をしています。ワトソンは家の中に入った後、「板張りむきだしの、埃だらけの廊下が、すぐ台所から勝手口の方へ通じていた。その途中に二つのドアがあり、一つはあきらかに数週間前から閉じたままであるらしく、あとの一つは食堂で、そこが怪事件のおこった現場であった。」(延原訳より)と記しています。このことからバーナードさんは二つの玄関があって、応接エリアが二つある家があてはまるとし、そうした家が329〜335番地にあったことを突き止めました。

場所としてはこのあたりです。

3 Lauriston Garden (?)

バーナードさんは、家の構造から場所を特定する手法が得意なようで、南ロンドンツアーで案内してくれた候補地も家の構造に基づいて特定したところが多かったことを思い出します。

最後はC.Prestige氏の説。彼はホワイト・ハート酒場を手がかりとしています。1938年から存在するホワイト・ハート食堂(tavern)が、同じ名前のPubを改修して作ったものとし、食堂のあったLiford RoadとHolland Road(現Loughborough Roadのことだと思われます)の角から考えて、Knatchbull Roadの北に延びる部分に立つ家の一つが3 Lauriston Gardenであったと結論しました。
場所としてはこのあたりでしょうか。

3 Lauriston Garden (?)

説によってかなり場所が違ってきていますね。アプローチの違いを見るのも面白いと思います。いずれ、これらの説が書かれている研究論文についても参照しようと思っているのですが、すべてを見つけるのは難しそうです。私の所属するロンドン・ホームズ協会が出している「The Sherlock Holmes Journal」と、最も有名なホームズ団体であるベーカーストリートイレギュラーズが出している「Baker Street Journal」については、過去の版をあつめたCD-Romがあるようですので、いずれ購入してみたいと思っています。(両者とも100ドルほどだそうです。)

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  これまで紹介してきた「ホームズゆかりの地」については、ホームページ「The World of Holmes」(管理人:みっちょんさん)の、「地下鉄駅を中心にしたホームズゆかりの地案内」のコンテンツで、リストにしてくださっています。みっちょんさんありがとうございます。 


現地探訪はこちらの本を基に行っています。(本文ではFSLと略しています。)

Finding Sherlock's London: Travel Guide to over 200 Sites in London

Finding Sherlock's London: Travel Guide to over 200 Sites in London

  • 作者: Thomas Bruce Wheeler
  • 出版社/メーカー: Iuniverse Inc
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: ペーパーバック
 
延原謙氏の訳はこちらからの引用です。

新潮文庫 シャーロック・ホームズ全集

新潮文庫 シャーロック・ホームズ全集

  • 出版社/メーカー: インターチャネル・ホロン
  • 発売日: 1998/02/06
  • メディア: ソフトウェア

 

 

その他に参考にしている本はこちら。

Sherlock Holmes in London: A Photographic Record of Conan Doyle's Stories

Sherlock Holmes in London: A Photographic Record of Conan Doyle's Stories

  • 作者: Charles Viney
  • 出版社/メーカー: Smithmark Pub
  • 発売日: 1995/09
  • メディア: ハードカバー

この本は日本語訳も出ているそうです。

 

シャーロック・ホームズの見たロンドン―写真に記録された名探偵の世界

シャーロック・ホームズの見たロンドン―写真に記録された名探偵の世界

  • 作者: チャールズ ヴァイニー
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1997/03
  • メディア: 文庫

原典にあたるときはこちらの新注釈付ホームズ全集を使っています。注釈があるので場所の特定に困ったときなど助かっています。

The New Annotated Sherlock Holmes 150th Anniversary: The Short Stories

The New Annotated Sherlock Holmes 150th Anniversary: The Short Stories

  • 作者: Arthur Conan, Sir Doyle, Leslie S. Klinger
  • 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
  • 発売日: 2004/11/08
  • メディア: ハードカバー

New Annotated Sherlock Holmes: The Novels: A Study In Scarlet / The Sign Of Four / The Hound Of The Baskervilles / The Valley Of Fear

New Annotated Sherlock Holmes: The Novels: A Study In Scarlet / The Sign Of Four / The Hound Of The Baskervilles / The Valley Of Fear

  • 作者: Arthur Conan, Sir Doyle
  • 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
  • 発売日: 2005/10/25
  • メディア: ハードカバー

 


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