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ゼロ時間へ [読書(楽しみ)]

ベティさんが主催されている月読みフォーラムの先月の課題でした。2月の出張前に購入できず一月遅れの課題クリアです。今回英国に行く前に購入して行きの飛行機で読み切ってしまいました。

ゼロ時間へ (クリスティ文庫)

ゼロ時間へ (クリスティ文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/05/14
  • メディア: 文庫




(以下ネタバレしないように書いているつもりですが多少ヒントになってしまっていたらすみません。)

作品の冒頭で、被害者、容疑者含め主要人物のエピソードが少しずつ語られて、人物像や背景、人間関係が徐々に明らかになってきます。すべてのエピソードが後の犯人推理の材料となると思うと読み飛ばせないのですが、それぞれ非常に短くて人の名前と背景を覚えておくだけでも大変で、たびたび人物紹介のページを読み返して頭に入れながら進めました。

クリスティやクイーンはあるところまで読み進むと読者の前にすべての材料が提出され、犯人が推理できる仕組みになっていますので、推理小説として読者が参加できるところが最大の楽しみです。ここらへんがシャーロック・ホームズとの違いですね。ホームズはホームズの探偵としての超人的な頭脳・探偵法を読者もワトソンと同じ目線で楽しむのが醍醐味でしょうか。あとはヴィクトリア時代の雰囲気を楽しむとか。確かにホームズとクリスティでは時代が時がいますので、クリスティの作品はホームズと違ってあまり時代の違いを意識せずに読めます。

この作品のコンセプトは殺人事件が始まりなのではなく、すべてのことが殺人の瞬間(ゼロ時間)に向かって収斂していくという考え方。この考え方は作中でも二人の人物によって語られていることからも犯人を推理するにあたっても重要な視点となります。ただし、私が感じたのは殺人の瞬間がゼロ時間なのではなく、その殺人によって起こる出来事の方がゼロ時間なのではないかといういこと。最後に何が起こって、その出来事が誰に利するのかを考えることが犯人特定の大きなヒントになると思います。

バトル警部が犯人捜しをする最後の場面に入る前に本を閉じて犯人捜しをしてみました。さすがにすべての材料をつなげて犯人を推理することはできなかったのですが、このとき考えた人物が犯人でしたので、結果としては大当たりだったと思います。上では最終的に起こる出来事から犯人と動機を推理するのがよいのではと書いたのですが、実際は犯行の状況とアリバイから犯人の目星をつけました。そこから材料をつなげていったのですが、さすがに最後の真相で明らかになるすべてのエピソードのつながりまでは推理はできませんでした。

読み終えて思ったのは、やはりクリスティは自分が参加できる醍醐味があるということ。どこまで読者に対してフェアに材料を提示するかという点については議論もあると思いますし、描き方によって(あえて)ミスリーディングするところもありますので、完全に推理が可能かというと疑問もなくはないのですが、それでも最後にすべての出来事がつながる爽快感というのは(推理が当たっていようがいまいが)魅力です。

クリスティはポワロものから制覇しようと思い「スタイルズ荘の怪事件」から初めて少しずつ読み進めてきたのですが、まだすべて読み切っていません。そのためポワロが出てこない作品はほとんど読んだことがなかったのですが、今回は読書会(参加できませんでしたが)という機会もあり面白い作品に出会えました。正確に言えば、ポワロもバトル警部の言葉の中ででてきますのでポワロ好きもくすぐられる要素ありでした。

クリスティももういちど何を読んだか整理してみて、封印している「カーテン」もそろそろ読む準備をしなければいけないかもしれません。
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みっちょん

こんばんは!

私はミス・マープルシリーズが読みたくなってクリスティを
再読中です。再読と言っても読んだのはウン十年前なので
内容や結末はかなり忘れています。

「ゼロ時間へ」もつい最近読みました。
若い頃に読んだ時にはこんなことをする人間なんているか
かしら・・と思ったような記憶があります。

でも、今では人間にはいろいろな人がいるのが判ったので
「犯人」のような考えをする人がいることに納得です。
by みっちょん (2008-03-12 21:38) 

Betty

こんばんは^^
課題図書を読まれたのですね!嬉しいです
この作品の題名「ゼロ時間へ」という言葉インパクトがありますよね
課題図書で選んだ後、色々調べたのですが
ミステリファンそれもクリスティファンの間ではこの言葉を使った文章で
他の書籍の感想を書いている方などもいる程知名度が高く、評価の高い1冊なのだと実感しました。
登場人物が多く混乱してしまう部分はありますが後半に向けての
推理・推理が楽しい作品ですよね。

これからも読んでみようかな~と思える課題図書が選べたらいいな☆
by Betty (2008-03-12 22:27) 

Tomo

>みっちょんさま、こんにちは。
ミス・マープルはドラマでみたくらいで実は本は読んだことがないのです。ポワロからと思っていたら逃してしまいました。
本作の犯人というのは確かにちょっと理解しがたいところがありますね。でも、最近のミステリー、検死官シリーズなんかを読んでるとこうしたサイコパス的な犯人も多いので、いつの時代もこういう人はいるということなのかもしれませんね。
by Tomo (2008-03-12 23:53) 

Tomo

>Bettyさん、こんにちは。
課題は締め切りには間に合いませんでしたが、読み終えました。ゼロ時間へというのはキーワードですね。確かに他の作品と違って、殺人事件が起こる前のできごとが重視されて描かれてますね。面白い作品を読めて満足です。
また課題図書に挑戦してみます。
by Tomo (2008-03-12 23:56) 

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