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チルドレン [読書(楽しみ)]

またまた伊坂幸太郎さんの本です。

チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/15
  • メディア: 文庫

伊坂さんの本は長編でありながら独立した話が最後に一緒になっていくというのが爽快なので短編は後回しと思っていました。 でも、読んでみると短編で一人称の主人公が毎回違うのですが、登場人物はすべての話を通して共通ですので、伊坂さんの長編とほぼ同じですね。

話は陣内という人物を中心に結びついている友人達、一緒に銀行強盗に巻き込まれた同級生の鴨居、同じ銀行にいた盲目の永瀬、その恋人の優子、仕事を始めた陣内の同僚武藤それぞれの目から語られます。武藤目線以外の話は陣内が大学時代の話で、武藤はその10年後の陣内との話となっています。

それぞれの話が微妙に結びついて、最後の話で不思議だったことが解消されてスッキリします。

話を面白くしているのは陣内のキャラクターが要因で、彼は話し好きで無責任、突拍子もないことを言ったりやったりするけどどこか憎めないところがあります。いいかげんなようで、何か深い意味があるような意味深な台詞を吐くのですが、これが意外と結果的に何か意味を持っていたり。

こんな感じです。

陣内さんは、「子供のことを英語でチャイルドと言うけど、複数形になるとチャイルズじゃなくて、チルドレンだろ。別物になるんだよ。」とよく言った。そういう性質なのだ、と。(P115)

「カポーティの小説にこういう一節があるんだ。」(中略)「彼の小説にさ、こんなことが書いてある。『あらゆる物事の中で一番悲しいのは、個人のことなどお構いなしに世界が動いていることだ。もし誰かが恋人と別れたら、世界は彼のために動くのを辞めるべきだ。』ってさ。」(中略)「それが現実に起きたんだよ。」「失恋した俺のために、今、この場所は止まってる。」(P166)

「少年の健全な育成とか、平和な家庭生活とか、少年法とか家事審判法の目的なんて、全部嘘でさ、どうでもいいんだ。俺たちの目的は、奇跡を起こすこと、それだ。 」(中略)「それを俺たちはやってみせるんだよ。』満足感を浮かべて、笑う。「俺たちは奇跡をやってみせるってわけだ。ところで、あんたたちの仕事では、奇跡を起こせるのか?」(P229)

伊坂さんの小説にはよく意味深な台詞を話す人物が出てきますが、この陣内が一番好きかもしれません。

 

ところで、これでほとんど文庫化された作品は読んでしまったようです。あとは「ギャング・・」の続編があるくらいでしょうか。ちょっと寂しいので、ハードカバーにもいっちゃうかもしれません。

 


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Pace

チルドレン、読みました♪
陣内くんのキャラも良かったですし、盲目の永瀬くんも魅力的な
人物でしたね。というか、陣内くんの周辺にはなぜか温かい空気感が
あって、引き込まれました。
伊坂作品では相変わらず「重力ピエロ」が私の中でNo.1ですが、
キャラでいえば確かに陣内くんが一番かもと思いました。
by Pace (2009-06-03 23:53) 

Tomo

>Paceさん、こんばんは。

永瀬君もなんでもお見通しみたいなところがいいですね。でも、陣内君のいい加減そうな所と不思議と奇跡を起こすところがやはりなんともいえないです。

私も今の所の作品ベストは重力ピエロですね。でも、ゴールデンスランバーがなかなか良いみたいなので、凌駕してくれることを期待しています。
by Tomo (2009-06-06 00:59) 

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