陽気なギャングの日常と襲撃 [読書(楽しみ)]
伊坂幸太郎さんの本も、これを読むとあとはハードカバーしか残ってないです。
伊坂さんの作品は、それぞれの作品に別の作品のことがちょっとだけ登場したりして、相互に微妙に関連しあっているというのが特徴なのですが、本作は「陽気なギャングが地球を回す」の続編。多分、続編は他にはないんじゃないかと思います。(文庫になってない作品はまだ分からないのですが。)
前作でも登場した銀行強盗4人組がそれぞれ出会ったちょっと不思議な出来事が微妙に絡み合ってというのが最初の4編。最初は彼ら4人を別々に描く予定だったのが、このばらばらの4編を書いた後で、やっぱりこの4人は一緒いいなきゃ、ということから長編として組み直した、と後書きに書いてありました。
最初に別々に出会った人たちが、やがて一つのストーリーに集約していく、というのは伊坂さん作品に共通しています。
4人はそれぞれ特技をもっていて、成瀬は人の嘘が見分けられるし冷静沈着なリーダー、雪子は正確な体内時計とドライビングテクニック、久遠は動物好きでスリの名人と、それぞれの特徴を活かして活躍しているのですが、響野は成瀬の幼なじみで演説担当(成瀬と久遠が銀行強盗している間に客に向かって演説する)、減らず口でいい加減というあまり役に立ってるとは思えないところが面白いところです。実はボクシングの達人で、ということはあるのですが、いつもへりくつばかりこねては周りを煙に巻いています。
でも、この響野が伊坂作品で共通して登場するキープレイヤーな気が。普段はいい加減な感じ満載なのに、たまに格言めいたことを言ってちょっと深いようなところをみせつつ、でも意外と重要な役割を担っています。
「こういう諺を知ってるか?」響野が指を立てる。「『私の言うとおりにやれ。わたしのやる通りにではなく。』」「都合がいい諺だなあ」「まあな」と響野が胸を張る。(P56)
「こういう言葉を知ってるか。『なにはともあれ結婚しなさい。良い妻を得た者は、幸福になれるし、悪妻を得れば、哲学者に慣れる。』」「ソクラテスの有名な言葉でしょ。知ってる。」「じゃあこれは知ってるか?『わたしの夫以外はすべて良い夫に見える。』」「何それ」「この間、祥子が言ってたんだ。誰の残した言葉なんだろうな。意味が分からない。』」「それは格言とか名言とかではなく、単に、思ったことをそのまま口にしただけだよ」「意味が分からない」「意味が分からないのは、最初の話題を平気でそらしていく響野さんのほうだ」(P164)
なんか食えないところがまたいいんですね。
ストーリーは最後にはいろんなことが重なり合って大団円なのですが、他の作品よりは自然な感じが若干なくて、カタルシスが得られることは得られるのですが、若干他より薄いかな。
さて、次は他の作品が文庫化されるのを待つか、ハードカバーに進むか迷いますね。でも伊坂ワールドにはまりこむと次がよみたくなるという中毒性もあり、ハードカバー購入ということになりそうです。
僕は良い妻を得たと思うので幸福になれるのでしょうか?。ハハハ~~~
by ばん (2009-06-28 01:18)
ここでも飄々としていて魅力的な人が登場するのですね!
それにしてもハイペースで、私はまだまだだと感じます(^^;
ハードだと、最新作は「終末のフール」でしょうか??
無性に伊坂さんの作品読みたくなってきました。
by Pace (2009-06-29 00:35)
>ばんさん、こんばんは。
すばらしい!哲学者になるよりは幸福になった方がいいですよねー。
by Tomo (2009-06-29 03:47)
>Paceさん、こんばんは。
小説だとハイペースで読めてしまいますね。もっと難しい本も読みたいと思いつつ手が伸びません。
ハードだと評判がいい「ゴールデンスランバー」が読んでみたいです。でもハードをすべて定価で買うと結構な出費ですよね。作家さんのために定価で買うようにしているのですが・・・。
by Tomo (2009-06-29 03:51)
たしかに本ってつい買ってしまうのですが・・・
結構な出費になりますよね^^;
by お茶屋 (2009-06-29 12:27)
>お茶屋様、こんばんは。
出費はかさみつつ、作家さんには収入になってほしいし、微妙なところです。本当に好きな作家さんのは必ず買うようにしています。
by Tomo (2009-07-01 00:22)